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2014年9月28日 (日)

石川啄木伝 東京編 276

 郁雨は啄木宅を辞して後、盛岡の堀合家に寄り、節子の妹ふき子との縁談を進めた。郁雨は孝子との結婚を希望したらしい。啄木も新婚当時彼女をかわいがり「妹よ(たか子に)」というかなり大きな詩を作って「明星」1905年(明38)7月号に載せている。「君はをさなき妹の、/姉に似たれば、無花果の」と詩中にもあるように孝子は節子によく似ていた。節子の形代を求める郁雨にはうってつけの女性であった。しかし父親の忠操は「順序というものがある」といってふき子との結婚の方を望み、こちらを承諾した 。郁雨は本音を押し殺して忠操の言にしたがった。
 啄木文中の「そんなに気乗りがしなくたつて」はこの間の消息を物語っている。そして節子へのいや増す思慕に悩んでいる郁雨に対して「謂ふ所の失望は女其人に対してゞはない。結婚といふ事実其事に対してだ。」などと能天気なことを言っている。郁雨はふき子との結婚話が進むほどにそして結婚して以後ますます、深刻な沈鬱状態に落ち込む(当時の言葉で言えば強度の神経衰弱といったところか)。ふき子はなんの落ち度もないのに不幸な新婚生活の淵に沈められることになる。

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