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2014年10月 2日 (木)

石川啄木伝 東京編 278

 半月何をしていたのか。郁雨の接待であろう。郁雨が帰った後は。同じ七月九日の手紙が語っている。
  それで僕の仕事の方はどうかと言ふと、書けぬ。毎晩書かう書かうと思つてるが書けぬ。
 
なぜ書けぬか。
 われわれは理由をいやと言うほど知っている。ローマ字日記がいやと言うほど語っていた。それなのに啄木はこう言って自らを欺き、妻と郁雨をも欺く。
  下宿になれぬせいだらう。京子には手こずつてる。そしてそれ、御存知の通り感情の融和のちつとも無い家庭なんだからね。
 書けないのは、下宿のせいだ(赤心館でも蓋平館でも書けなかったくせに)、京子のせいだ(自分はその父親だろう)、母と妻の仲がわるいからだ(その主な責任は函館に1年間も放っておいた自分にあるだろう)。
 選りに選って決して言ってはいけない相手に向かってあぶない事をしゃべっている。郁雨はますます啄木に批判的になり、節子に同情し恋慕の情を強めるだろう。ふき子への愛情はいっそう湧きにくくなるだろう。

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