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2014年10月 4日 (土)

石川啄木伝 東京編 279

 手紙はさらにわるいことを書き連ねる。右のつづきである。
 一昨晩だつたか、母と妻に散々小言を言つて見たが、それでも不愉快が消えツこはない。十時頃フイと飛出したが、浅草に行くにしても宿屋へとまるにしても金がない。こんな時金のないのが一番癪に障るよ。そして回数券だけはあるから一時間半許りアテなしに電車に乗つて方々廻つて歩いた。しまひに日比谷公園へ行つて、雨の降る真暗な中で小便して来た。今から書いたところで今月は間にあはぬ。
 「浅草」の2文字は時間が10時を過ぎているのだから、塔下苑のことだ。金があったら、また女を買うつもりだったのだ(これも夫婦仲の現在を示唆している)。しかし金がなかったので、買えなかった。そこでこの事情を金を恵んでもらうための口実に使おうとしている。伏線の最後はこうだ。「今から書いたところで今月は間にあはぬ。」

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