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2014年10月20日 (月)

石川啄木伝 東京編 287

 四つ目、人間観。
 寒村の寺の僧一禎にとって最も重要かつ恒常的な人間関係は当然檀信徒との関係であった。きわめて俗な一禎であったが頭がよく、仏教・曹洞宗・高祖道元等に関しても知識があり、檀信徒に対してある種の権威を帯びて振る舞う立場にあった。僧一禎にとって檀信徒=「人間」はいわば教化の対象なのであった。
 啄木の高踏的な立場、「人間」を教化の対象と考える観念の祖型は無意識のうちに一禎の影響下に形作られたと見られる。高山樗牛の「文明思想家としての文学者」を全身全霊で受け止めたのもこの素地があったからなのである。見てきた様に啄木のこれまでの人間観は高踏的・エリート的であった。だから自然主義は受け入れきれなかったのだ。自然主義以外の立場を求めたにしても、元の立場(自己賛美の垂れ流し)にもどるか、「天鵞絨」のように絵空事に流れるか、どのみち小説は書けないのである。

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