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2014年11月 8日 (土)

石川啄木伝 東京編 296

 このように変わりつつある啄木に青天の霹靂に近い事件が起きた。7月28日森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」を掲載した「スバル」7月号が発売禁止になったのである。当時森鴎外は陸軍軍医総監でもあったのだが。「スバル」の「編輯兼発行人」は「石川一」である。啄木のところへも官憲がやってきて発禁を告げたはずである 。「スバル」の出資者であり頼りになる弁護士でもある平出修は高知に行っていて不在であった。啄木は鴎外と連絡を取って、問題を処理したのであろう。  
 自分とは無縁にしておきたかった「国民生活」の一面を「面相(おもてあい)接して直視」せざるを得なくなった。不可避の課題は向こうからやってきた。事件は啄木に個人と国家の関係を深く考えさせることになる。
 7月29日、連載中の「それから」で漱石は有名な日本と日本人批判をおこなう。
  (日本人の)精神の困憊(こんぱい)と身体(しんたい)の衰弱とは不幸にして伴つてゐる。のみならず、道徳の敗退も一所(しよ)に来てゐる。日本(にほん)国中何処を見渡したつて、輝いてる断面は一寸四方も無いぢやないか。悉(ことごと)く暗黒(あんこく)だ。
 漱石による「国民生活」の「真面目」な批判は峻烈であるが、啄木はこれを深いところで摂取しつつある。1年後の「時代閉塞の現状」認識は「それから」抜きには考えられない。

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