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2014年11月20日 (木)

石川啄木伝 東京編 302

 ところが、乞食は渋民の木賃宿に泊まり、翌朝盛岡に向かったのだった。福富はそれを見て、甲田に知らせる。甲田は「俺は訛(だま)された」と思う。
 その次の29日、高橋次郎吉という差出人から甲田に葉書が届く。
  My dear Sir, 閣下の厚情万謝々々。……御恩は永久に忘れ不申候。昨日御別れ致候後、途中腹痛にて困難を極め、午後十一時漸く当市に無事安着仕候。……末筆ながら I wish you a happy.
     六月二十八日午前六時〇〇市出発に臨みて。

 この「葉書」をめぐって放課後の職員室は話にちょっとした花が咲く。
 此木田は「乞食してゐて五十銭も貰つたら、俺だつて歩くのが可厭(いや)になりますよ」(甲田さんは)「態々(わざわざ)人から借りて呉れてやつて訛(だま)され」たのだと言う。
 甲田はムシャクシャして反論しようとするが、「徒らに目を輝かし、眉をぴりぴりさ」すばかり。
 校長も此木田に応じて「呉れるにしても五十銭は少し余計でしたな」と言う。
 福富はあとで「年老(と)つた人は同情がありませんね」と言って笑い、オルガンのある部屋に賛美歌を歌いにゆく。

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