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2014年11月24日 (月)

石川啄木伝 東京編 304

 こうして高橋は甲田をだましたことになり、そのため「葉書」にうそを書くはめになった。そして「葉書」のうそがばれ、甲田は二重に「訛(だま)され」たことになった。田舎小学校の職員室の日常に「葉書」をめぐって話の花が咲いた。
 「葉書」をめぐる議論では甲田は結局、老訓導の此木田の意見と「好人物(おひとよし)」校長の意見とを合わせて認めざるをえないのだった。
 「乞食してゐて五十銭も貰つた」ために生じた高橋の心は、夏目漱石の言う「思ひがけぬ心」(「人生」など)に通じている。
 しかし甲田自身は高橋という乞食に同情したこと、嫌悪も感じたこと、その両方の気持から「五十銭」を与えたこと、その結果高橋を嘘つきにしてしまい、「葉書」に至ったのだということを、明確には自覚していない。自分の複雑な心理は忘れ、此木田と校長の意見になんとなく同調してしまうのである。

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