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2015年4月24日 (金)

石川啄木伝 東京編 336

 しかしこの道を歩みつづける決意はすでに固まっている。ただ、この道を歩むための思想的根底はまだ無い。
 しかも、詩から小説に移ったとはいえ、白秋・杢太郎らの「屋上庭園」につづいて泡鳴の言までが詩人啄木の心を揺さぶる。自分はいかなる詩を今後創作すべきなのか、歌は、小説は……、創作のための理念がなくては。そのためにも根底となるべき思想が欲しい。
 11月15日「百回通信」(二十五)を執筆。「工場法案」を論じ、また社会主義に触れる。
  ……同案の一大眼目たるべき労働時間の如きは何等の制限を設けず、但十六歳未満の男子及び一般女子に対して、八時間以上十二時間てふ、あれども無きに等しき範囲を附し、十二歳以下の小児の労働を禁じ、外に傷病者扶助、休息時間、誘拐雇人の予防、傭使の方法、工場の構造設備等の事項を規定してあるに過ぎざる者の如く候。
  ……
  夫
(そ)れ一般近世政治思想の根本的特色は、人類の生活を担保し、安心して之を改善せしむるにあり。此の傾向を最も端的に代表する者は善意に所謂社会主義にして、其思想的経路は近世文明を一貫する解放運動に繋がり、即ち人類の現状を生活の圧迫其物より解放せんとするものにして、其学術的基礎は、人生に対する経済学的研究を成就するに在り。
 ここで問題にしているのは「人類の生活」の「改善」である。ナショナルの結界を超えてグローバルな生活の改善に眼が届いている。しかもその改善が社会主義(社会政策)と結びついて発想されていることに注目したい。

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