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2015年4月28日 (火)

石川啄木伝 東京編 340

 「浪漫的(ロマンチツク)」が解体したことは啄木の思想的足場が解体したことであった。啄木は見てきたように、今「生活」を最重要視し、自分と家族の生活のために必要な実践をすべてに先行させている。啄木自身の表現を用いれば「読書を廃し、交友に背き、朝から晩まで目をつぶつたやうな心持でせつせと働いて」いるのである 。こうした生活態度の支えとなる思想を、今の啄木は求めているのである。ここに入りこんだのが田中王堂のプラグマティズムであった。(後述)
 さて、すでに触れたが「百回通信」を10月1日以来28回にわたって執筆してきた啄木は、11月19日執筆(21日掲載)の第(二十八)回をもって中止する。中止の理由は不明である。朝日新聞社ではこの11月から二葉亭全集の校正の仕事が増えている(それは収入増にもつながるが)。そのため肉体的負担の軽減の必要、自由になる時間の確保などが理由としてあったのかもしれない。
 「百回通信」の執筆送稿をやめたことで、20日から出勤前の数時間が自由になった。
啄木がこの時間を得て、まず始めたのは「屋上庭園」を取り出し、これと正対することであったと思われる。
 なかでも白秋の文語自由詩3編にとくに刺激され、口語自由詩の試作をおこなったのが11月20日以後の約10日間と推定される。
 その試作品とみなされるのが「渡鳥(未完)」「無題(昼は落葉をのせ……)」「無題(秋の夕べの重くるしさ……)」「若き主人の留守(未完)」「無題(屋根又屋根……)」の5編である 。いずれも函館市中央図書館所蔵の「暗い穴の中へ 外七編及詩稿」中の「詩稿」に収められている。

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