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2020年1月13日 (月)

石川啄木伝 東京編 1910年(明治43)その11

 一禎という人は性的にも野放図なところがあったし 身体強壮
でもあったようだ。その一禎(この時かぞえ60歳)が上京して久
し振りに老妻カツ(63歳)と再会したのだった。襖一つ隔てた隣
室から拒否するカツと執拗に求める一禎との悲喜劇的なやりとり
の聞こえてくることがあったのかも知れない。となると、作者啄
木の老人の性への嘲笑は、父の性に対する批判の転写ということ
になる。
 このようにわたくしが勘ぐるのにも傍証はある。
三人の「老人(としより)」は批評会後に出た酒を楽しんだ。その後
また大きな農家に呼ばれてそこでも酒が出された。目賀田はとく
に飲んでとくに酔った。多吉は松子に向かってこう評する。
  僕も年老(としよ)つて飲酒家(さけのみ)になつたら、ああでせうか?
実に意地が汚い。目賀田さんなんか盃より先に口の方を持つ
て行きますよ。
 一禎こそ「年老(としよ)つて飲酒家(さけのみ)になつた」人であろう。
節子の先の手紙を再度引く。「父は酒を毎晩ほしがるし、仲々質
屋と縁をきる事はむづかしい様ですよ。何時も何時もピーピーよ」
 三人の「老人(としより)」とくに目賀田(60歳前後)へのきつい批判
はこうした一禎と不可分であろう。老人の性への批判にも同様の
ことが言えると思われる。

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