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2020年1月15日 (水)

石川啄木伝 東京編 1910年(明治43)その13

 真個(ほんと)に言つて了へば嚇(おどか)し過ぎだろう(二点リー
ダー「‥」16字分)。」と多吉は思つた。そして、「罷めましたよ。
貴方が吃驚(びっくり)するから。」
 松子は大丈夫と言い張る。日が沈んできたらしい。辺りがぼう
っとしてきた。松子は突然くっくっと一人で笑い出した。笑って
も笑っても止めなかつた。
 多吉は「女には皆娼婦(――2字分)の性質があるといふが、
真個(ほんと)か知ら。」とふと思う 。
 話題を前任の女教師のことに転じて「女は皆娼婦(――2字分)
の性質を持つてるつて真個ですかつて言つたら、貴方とはこれか
ら口を利かないつて言はれましたよ。」などと言う。
 そしてさっき「罷めた。」件に戻る。
 「僕が貴方を抱き締め(「――」4字分)ようとしたら、何(ど)
うしますつて、言ふ積りだつたんです。あははは。」
 「可いわ、そんな事言つて。‥‥‥真個(ほんと)は私も多分さ
うだらうと思つたの。だから可笑しかつたわ。」
 其の笑ひ声を聞くと多吉は何か的(あて)が脱(はず)れたやうに
思つた。そして女を見た。
 周匝(あたり)はもう薄暗かつた。
 「まあ、何(どう)しませう、先生?こんなに暗くなつちやつ
た。」と暫くあつて松子は俄かに気が急き出したやうに言つた。
 多吉には、然し、そんな事は何うでもよかつた。女といふ
(「――」4字分)ものが、急に解らないものになつたやうな心
持であつた。
 多吉は(作者啄木も)すべての女性に「娼婦の性質」があるの
ではないか、と疑う。
娼婦の性質」は「娼婦性」と言い換えてもいいであろう。
「娼婦」という職業は相手を選ばず性交に応ずるのが基本であ
る。「娼婦性」は本来的には「娼婦」という特殊な職業にある限
りで備えているべき女性の性的あり方およびそれに付随する態度
・振る舞い(媚び、誘惑など)の謂いであろう。言い換えれば、
性交相手を余り選ばない性向とそれに付随する媚びや誘惑的言動
とでもなろう。「娼婦」である女性個々人の生来の性向を指す言
葉ではない。

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