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2020年5月23日 (土)

石川啄木伝東京編1910年(明治43)その134

我々青年を囲繞する空気は、今やもう少しも流動しな
くなつた」は、青年をとりまく息苦しさを表現して絶妙であ
る。つづく二つのセンテンスは啄木が究明した時代閉塞の
現状の根因である。一つは「強権」一つは「現代社会組織」。
「強権」すなわち「天皇制の論理」を「最重要の武器とす
」国家権力の支配が国内の隅々にまで浸透し、青年に有
無を言わせない。
 「現代社会組織」すなわち資本家制度にもとづく社会組織
の発達はほぼ行き詰まり・閉塞状態である。社会組織の行
き詰まりはその基礎である経済制度・資本(家)制度のつ
ぎのような行き詰まりによって確認できる。「戦争」等に
よってしか「振興する見込の無い一般経済界の状態」、貧民
と売淫婦の激増とこれに連動する犯罪と売淫の激増。
 前者は強大すぎて、また「天皇制の論理」のせいで立ち
向かうのがむずかしい。後者は巨大な社会組織の問題なの
でいかんともしがたい。
 斯くの如き時代閉塞の現状に於て、我々の中最も急進的
な人達が、如何なる方面に其「自己」を主張してゐるかは
既に読者の知る如くである。実に彼等は、抑へても抑へて
も抑へきれぬ自己其者の圧迫に堪へかねて、彼等の入れら
れてゐる箱の最も板の薄い処、若くは空隙(現代社会組織
の欠陥)に向つて全く盲目的に突進してゐる。今日の小説
や詩や歌の殆どすべてが女郎買、淫売買、乃至野合、姦通
の記録であるのは決して偶然ではない。
 今井泰子は「我々の中最も急進的な人達」は「天皇暗殺計
画の発覚で逮捕された管野スガら数名の者たちおよび当局
に便乗逮捕された大量の無政府主義者」をさし「最も板の薄
い処、若くは空隙(現代社会組織の欠陥)」は「天皇制」を
さすと言った 。引用文中の終わりのセンテンスをみると今
井の読み違いのように見えるであろう。

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