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2020年5月31日 (日)

石川啄木伝東京編1910年(明治43)その141

(承前)

女あり我がいひつけに背かじと心を砕く見ればかなしも B10
手も足も出ずと呟きて手も足も投げ出して寝る男の顔かな B11
今日よりは我も酒など呷らむと思へる日より秋風が吹く B12 
大海のその片隅につらなれる島々の上に秋の風吹く B13
下らなき小説をかきてよろこべる男憐れなり初秋の風 B14
秋の風今日よりは彼のふやけたる男に口を利かじと思ふ B15
男と生れ男と交り負けてをりかるが故にや秋が身にしむ B16
マチすれば二尺許りの明るさの中をよぎれる白き蛾のあり B17
その昔秀才の名の高かりし友牢にあり秋の風吹く C1
いつも来るこの酒店のかなしさよ夕日赤々と酒にさし入る C2
わが友は今日も母なき子を負ひてかの城跡をさまよへるかな C3
この日頃ひそかに胸にやどりたる悔あり我を笑はしめざり C4
公園のとある木かげの捨椅子に思ひあまりて身をよせしかな C5
公園のかなしみよ君の嫁ぎてよりすでに七月来しこともなし C6
やとばかり桂首相に手とられしゆめみてさめぬ秋の夜の二時 C7
しんとして眠れる夜の大道をわが足音を気にしつゝゆく C8
実務にはやくにたゝざるうた人と我見る人に金かりにけり C9
今おもへばげに彼もまた秋水の一味なりしと思ふふしもあり D1
常日頃好みて言ひし革命の語をつゝしみて秋に入れりけり D2
この世よりのがれむと思ふ企てに遊蕩の名を与へられしかな D3
わが抱く思想はすべて金なきに因する如し秋の風吹く D4
秋の風われら明治の青年の危機をかなしむ顔なでゝ吹く D5
時代閉塞の現状をいかにせむ秋に入りてことにかく思ふかな D6

 

 

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